2018年3月2日金曜日

四方田犬彦編著 1968【1】文化(筑摩選書)

 

 最近、好きな作家の小説の感想ばかり投稿しているが、他のいろいろな本も読んでいる。些事にかまけて、あるいは他のブログを優先していて、書けていないというのが正直なところだ。

 1968年が大学2年であり、少なからずその時代に活動したので、この手の著書に今でも非常に興味を持っている。若い頃から数えれば10冊以上は読んでいるであろう。しかしその多くが当時を振り返り、自分の行動(活動)は間違っていない、という主張がほとんどである。私にとって興味があるのは、その時代の活動をどのように発展させ、今に影響を及ぼしているかである。欧米においては、政治や経済活動において、当時の若者が成長し、今の社会にも影響を持っているようにも見えるのであるが、なぜか日本ではそのように見えないのが残念である。理由は、はっきりしている。活動が既存の権威に対する反発だけであり、変革した後の目標を持っていなかったからだ(長期的展望と人材不足が原因)。

 この本は、文化に絞ってまとめられているが、編著者が四方田犬彦であることもあり、「反権威・反権力」で整理されている。文化については、政治経済状況とは異なり、少なからず、当時の活動が影響を及ぼしている。

 この時代には、世界的に「カウンター・カルチャー」が湧き上がり、現在の「サブカルチャー」を中心としたカルチャーを作り出した礎を築いたと言っても過言ではないであろう(1960年代後半の世界的な若者の活動の大きな遺産はカルチャーであるというのが、定説である)。もちろん突然に現れたわけではなく、50年代にはビート世代が新しいカルチャーを志向して動いていた。第二次世界大戦(及び/あるいはその終結)でポッカリ空いた空洞を埋めようと先進的な若者が動いたのがビートであり、ヒッピームーブメントなどを経て、辿り着いた文化であり継続している。


 こういった著書においては致し方ないのであろうが、一方的な見方が強く、その時代の全体像を把握するのは難しい。また、一方的な割には、「反権威・反権力」的活動を網羅的に散りばめ、総花的であり、読む者に強い印象を残さないというのが残念である。