お勧め度:まあお勧め
テーマ:社会的
ストーリー:面白い
プロット、文体:特筆すべきことなし
一年ちょっと前くらいから桐野夏生の小説を読むようになった。社会性のあるテーマを扱いながら、内容はエンターテイメントであり、気を張りたくない時、読みやすいためだ
彼女は、今年の文藝・秋号の特集「現代文学地図2000→2020」の現代文学地図(シーン)2017では、社会・物語象限の左上に位置取りされている。
この作品の主人公が「連合赤軍」事件の脱走者をであることから、読んでみようという気になった。新聞や雑誌の書評欄の多くで取り上げられたのであろう、図書館の貸し出し予約が100人近くになっていた。
女性の視点からの取り上げられ方がユニークであり、楽しく読んだ。
しかし、当初期待した内容とは違って、事件全体に対する視点というよりは、妹や姪、昔の同志などとの感情の違い、スポーツジムでの人間関係などに対する個人的な視点からのストーリーとなっていたのは残念だった。
連合赤軍がひき起こした「あさま山荘」事件から四十年余。
その直前、山岳地帯で行なわれた「総括」と称する内部メンバー同士での批判により、12名がリンチで死亡した。
西田啓子は「総括」から逃げ出してきた一人だった。
親戚からはつまはじきにされ、両親は早くに亡くなり、いまはスポーツジムに通いながら、一人で細々と暮している。かろうじて妹の和子と、その娘・佳絵と交流はあるが、佳絵には過去を告げていない。
そんな中、元連合赤軍のメンバー・熊谷千代治から突然連絡がくる。時を同じくして、元連合赤軍最高幹部の永田洋子死刑囚が死亡したとニュースが流れる。
過去と決別したはずだった啓子だが、佳絵の結婚を機に逮捕されたことを告げ、関係がぎくしゃくし始める。さらには、結婚式をする予定のサイパンに、過去に起こした罪で逮捕される可能性があり、行けないことが発覚する。過去の恋人・久間伸郎や、連合赤軍について調べているライター・古市洋造から連絡があり、敬子は過去と直面せずにはいられなくなる。
いま明かされる「山岳ベース」で起こった出来事。「総括」とは何だったのか。集った女たちが夢見たものとは――。啓子は何を思い、何と戦っていたのか。
桐野夏生が挑む、「連合赤軍」の真実。
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