2017年12月11日月曜日

世界から見た日本文学(2)

「ヨーロッパの片隅で村上春樹とノーベル賞と世界文学のことを考えたーウクライナ、リヴィウより」沼野充義(東大大学院教授、54年生まれ)

 沼野充義は、村上春樹について論じることが多い、評論家でもある。
 外国で村上文学が人気の高い理由として、普遍性と特殊性の絶妙ブレンドであると言う。つまり、世界でも通用する、世界のどこで起こってもいいような物語でありながら、その一方で品のいい日本らしい「エグゾティック」なフレーバーもうっすらと感じられ、その両者を渾然と織りなす作品構成が天才的だ、と言う。
 しかし、この稿では、「村上春樹はノーベル賞を受賞するだろうか」という問いに対して、私は懐疑的な答え方をするのが常である、と書いている。そのいくつかの理由を掲げている。
1)「大衆文学」と見なされるようなベストセラーの著者に与えられる賞ではない
2)スウェーデンのインテリが決める賞である
3)「理想主義的な傾向のもっともすぐれた作品を創作した人物」に与えられる
4)最近は、ヨーロッパ周縁の小国やアジア・アフリカにも賞が行くようになり、女性の受賞も増えてきた

 これらを踏まえて、幾人かの候補者を挙げている。例えば、
韓国の高銀(コウン)、アルバニアのイスマイル・カダレ、シリア出身のアドニス、ケニアのグギ・ワ・ジオンゴ、エストニアのカプリンスキ、ルーマニアのカルタレスク。
また、日本では、石牟礼道子、小川洋子、多和田葉子、谷川俊太郎 である。

 村上春樹については、現在のノーベル賞委員会の倫理観では、彼の作品が十分理解されているとはいいがたいように思う、と書いている。特にネックになるのは、セックス描写や女性の扱い方ではないか、とも書いている。


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