2018年4月7日土曜日

「小説は具体性の積み重ね」(朝日新聞2018年3月30日朝刊・文芸時評・純文学/磯崎憲一郎)

 磯崎は、冒頭、下記のように書いていた。とても良い表現(内容)だったので、紹介したい。

「何をどう書いても構わない、一切の定義付けや決まり事を拒むのが小説という言語表現ではあるのだが、しかし多くの書き手が日々実作を続ける中で感じる、小説を小説たらしめている第一の理由とは、具体性をもって描かれる、ということではないか。登場人物の動き、会話、出来事、事物や風景の描写、さらには過去の回想や意識の流れまで含めた、それら具体性の幾重もの積み上げによってしか表し得ない何かを伝えるために、書き手は評論や随筆といった他の散文形式ではなく、小説という方法を選び、書き始めるのだと思う。」

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