前から気になっていた一冊であったが、実のところ内容については余り頭に入っていなかった。朝日新聞の好書好日(あれ!、私のこのブログの題名に似ている。私のブログの方が古いので真似ではない)(5月4日朝刊掲載)で、翻訳家の辛島 デイヴィッドが、以下のように紹介していたので、早速、図書館で借りて読んだ。
在日韓国人の「ジニ」は、朝鮮語がわからないまま、中学生で朝鮮学校に入学する。留学先のアメリカでの「現在」、「革命」を目指すまでの朝鮮学校での記憶、北朝鮮の親族の手紙。短い章のコラージュにより物語はテンポよく展開する。主題は(2)のリービに近いが、その軽快なスタイルは、どちらかというと(同じ群像新人文学賞の)(1)の村上のデビュー作を思わせる。主題やスタイルがどのように発展していくのか楽しみな才能。
注)(2):「模範郷」? (1):村上春樹
米国での高校生(中学生?)の生活から始まる。ポップな書き出しで気分良くスッと入れる。しかし、学校から退学を勧められ(勧告され)、ホームステイ先のママ・ステファニーと相談されるように校長に言われたところあたりから、段々と、湿った特徴の日本の小説っぽくなり始める。「あなた、ここに来る前に何かあったのかしら」、というステファニーの問いかけから、日本にいた時のジニの朝鮮学校時代の話に切り替わる。
この小説がデビュー作であるので仕方ないのかも知れないが、朝鮮学校におけるジニの生活記録的な物語や文章は、やや粗雑な感じがする。出だしの才能を思わせる語り口やストーリー、構成とはかけ離れている。才能はあるだろう。間違いはない。しかし、芥川賞を受賞できなかった理由は、その辺にあるだろう。審査員からしてみれば、もう何作か見て見たかったのだろう。
(閑話休題)
ジニの朝鮮学校での生活は重苦しく、徐々に、お国(日本ではない。北朝鮮は母国とも言えないだろう)の現体制(一族支配)への怒りになっていく。ストーリーが粗雑な感じがするのは、朝鮮学校では絶対ありえない事をストーリーにしているのに加え、それが政治的な主張に思えてしまえるからだ。
読む人によって受け取り方は違うだろう。是非、一読し、判断していただきたい。
書籍データ
:二つの言語の間で必死に生き抜いた少女の革命。全選考委員の絶賛により第59回群像新人文学賞を受賞、若き才能の圧倒的デビュー作!