2019年5月12日日曜日

崔 実(チェ シル)著「ジニのパズル」


 前から気になっていた一冊であったが、実のところ内容については余り頭に入っていなかった。朝日新聞の好書好日(あれ!、私のこのブログの題名に似ている。私のブログの方が古いので真似ではない)(5月4日朝刊掲載)で、翻訳家の辛島 デイヴィッドが、以下のように紹介していたので、早速、図書館で借りて読んだ。

在日韓国人の「ジニ」は、朝鮮語がわからないまま、中学生で朝鮮学校に入学する。留学先のアメリカでの「現在」、「革命」を目指すまでの朝鮮学校での記憶、北朝鮮の親族の手紙。短い章のコラージュにより物語はテンポよく展開する。主題は(2)のリービに近いが、その軽快なスタイルは、どちらかというと(同じ群像新人文学賞の)(1)の村上のデビュー作を思わせる。主題やスタイルがどのように発展していくのか楽しみな才能。
注)(2):「模範郷」? (1):村上春樹

 米国での高校生(中学生?)の生活から始まる。ポップな書き出しで気分良くスッと入れる。しかし、学校から退学を勧められ(勧告され)、ホームステイ先のママ・ステファニーと相談されるように校長に言われたところあたりから、段々と、湿った特徴の日本の小説っぽくなり始める。「あなた、ここに来る前に何かあったのかしら」、というステファニーの問いかけから、日本にいた時のジニの朝鮮学校時代の話に切り替わる。
 この小説がデビュー作であるので仕方ないのかも知れないが、朝鮮学校におけるジニの生活記録的な物語や文章は、やや粗雑な感じがする。出だしの才能を思わせる語り口やストーリー、構成とはかけ離れている。才能はあるだろう。間違いはない。しかし、芥川賞を受賞できなかった理由は、その辺にあるだろう。審査員からしてみれば、もう何作か見て見たかったのだろう。
(閑話休題)
 ジニの朝鮮学校での生活は重苦しく、徐々に、お国(日本ではない。北朝鮮は母国とも言えないだろう)の現体制(一族支配)への怒りになっていく。ストーリーが粗雑な感じがするのは、朝鮮学校では絶対ありえない事をストーリーにしているのに加え、それが政治的な主張に思えてしまえるからだ。
 読む人によって受け取り方は違うだろう。是非、一読し、判断していただきたい。

書籍データ

:二つの言語の間で必死に生き抜いた少女の革命。全選考委員の絶賛により第59回群像新人文学賞を受賞、若き才能の圧倒的デビュー作!

2019年5月9日木曜日

書籍データ

 以前から書籍に関するデータが欲しいと思っていた。
 ISBNさえあれば本の内容が簡単に分かるということは知っていた。しかし、ネットでちょっと探しただけではどこにあるか見つからなかった。だからいつもAMAZONで見つけたりしている。でも、めんど臭いし、古い本だと見つからないケースもある。今回ネットで見つけたのは、openBDというウェブサイト。しかし、そのサイトでも直には検索できない。そのデータを活用する方法が別のサイトに載っていたので、それに従って、HTMLをコピーし、index.hemlを作成したので公開したい。下記のリンクを使えば書誌データと書籍の内容が把握できる(ただし、文庫については単行本があると表示されないケースがあった)。
 本の内容を知る検索ページ

 書誌データについては、
 国立国会図書館 や
 日本書籍出版協会 などで探すことができる。

2019年5月8日水曜日

文豪春秋 第2回「三角形の歌」

 第1回の「走れ芥川賞」は、「走れメロス」を書いた太宰治が川端康成や佐藤春夫に手紙を出して芥川賞を請い願う話。その後、有名になる太宰にしては何とも不思議な行動である。有名な話ではあるが、漫画に描かれると今更馬鹿だな、と思ってしまう。

 この回は、中原中也と同棲していた長谷川泰子を友達の小林秀雄が奪ってしまう話(詩人が絡んだ三角関係の話)。それなりに有名な話ではあるが、人生訓的な話を書くと思える小林の道を外れた行いはなんとも解せない。まあ、彼らはそんな輩なのだと思うしかない。
 第2回「三角形の歌」

文豪春秋(ドリヤス工場 作画:文学界連載)

 最近、このブログのみでなく投稿が適当になっている。投稿しないだけではなく、中途半端になっている。すでに半ば自由な身になって6年以上が経過した。何をやっても何をやらなくとも良い(実は、分担を任された家事手伝いはやること必須。これが荷が重く、時間もそれなりに取られる)のだが、あれやこれやでバタバタした生活をしている。書けば長くなるので、省略する。この直前の投稿「2018年の読書」にしても、(1)で次の(2)は書いていない(いつになるか、多分、書かないままで終わるだろう)。

 本稿は、それとは離れて、ドリヤス工場作画の「文豪春秋」について書こうとしている。「文豪春秋」は、文学界に連載されている。書家の石川九楊が連載している、「河東碧梧桐ー表現の永続革命」を読もうとしたら、偶然に見つけた。新聞か何かでそのような漫画(?)があるのは知っていた。当初はちらっと見て、読む気がしなかったのだが、ある時、何の話か忘れたが面白かったので、時間があれば読むことにした。読めばなかなか面白い。石川氏の連載は6月号で終わるので、文学界を図書館から借りるのは終わりになる。しかし、文春オンラインでも読むことができるので、そちらで第1回から読むことにした。第1回は、「走れ芥川賞」。下記ページから見ることができる。

 第1回「走れ芥川賞」