「中古典」とは著者斎藤美奈子の造語で、「古典未満の中途半端に古いベストセラー」を指すという。文学研究の世界では、「古典」とは上代から近世までの文学のことで、近代以降は「古典」とは呼ばないというが、現代人の感覚では夏目漱石や森鴎外は充分に古典だろう、と言う。
「中古典」は歴史的な評価が定まっていない本で、「古典」に昇格するか否かは現時点では神のみぞ知るとも言う。本書では1960年代から90年代初頭までの計48冊を取り上げている。本人も書いているが、取り上げられた本は彼女の趣味が反映していることは否めないが、なかなかうまく選んでいると思う。
本書の元になった文章は、紀伊國屋書店のPR誌「scripta(スクリプタ)」の連載「中古典ノスゝメ」である。2006年から14年間連載したらしいが、今回上梓するの当たって大幅に書き直したという。7月にあとがきを書いているが、新型コロナウィルス禍を考慮しての書き換えも認められた。
斎藤美奈子という名前は知っていたし、面白そうな活動をしていそうだと思ってはいたが、朝日新聞の書評で読んだくらいで、まとまった本を読んでいなかった。今回読んで、なかなか面白いと思った。女性から見た考えも散見するが、余り読者の世代、ジェンダーを気にしていないような書きっぷりが、爽やかとも言える。
この本の中では、取り上げられた本の批評以外に、似たような著作も取り上げられていて、同類の著作が俯瞰できる。
著者は、取り上げた作品を、1)若者たちの生態を映す青春小説、2)「自立の時代」の女性エッセイ、3)反省モードから生まれた社会派ノンフィクション、4)懲りずに湧いてくる日本人論、に整理している。確かに、そのように思える。
各作品の名作度と使える度を星印で3段階に表している。総じて、60年代には甘く、日本人論には厳しいように思えた。
名作度で星 3つ:
橋のない川、日本の思想、キューポラ、江分利満氏、白い巨塔、文明の生態史観、あゝ野麦峠、どくとるマンボウ、赤頭巾ちゃん、日本沈没、自動車絶望工場、兎の眼、桃尻娘、原発、悪魔の飽食、なんとなく、窓ぎわの
使える度で星 3つ:
橋のない川、感傷旅行、あゝ野麦峠、青春の蹉跌、どくとるマンボウ、自動車絶望工場、兎の眼、スローな、桃尻娘、原発、悪魔の飽食、窓ぎわの、見栄講座、極東
因みに私が見たり読んだりした作品は多くはない。
読書:日本の思想、わたしが・、されど、どくとるマンボウ、二十歳の、自動車絶望工場(?)、スローな(?)、四季・奈津子(?)、蒼い時、なんとなく、ノルウェイの(11作品、23%)
映画(ドラマ):キューポラ、江分利満氏、わたしが・、白い巨塔(ドラマも)、あゝ野麦峠(?)、青春の蹉跌(ドラマのみ)、日本沈没、ひとひらの雪、ノルウェイの(9作品)
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