文芸雑誌・新潮の2013年12月号に山城むつみという文芸評論家が「秋山駿の地声」と題して文芸評論家・秋山駿に対する追悼文を書いている。
それを見て「ああ、そんな事があった」、と思い出した事があった。殺人を犯し、死刑になった永山則夫の日本文藝家協会入会問題である。
協会は永山が殺人事件の刑事被告人である事を理由に彼の入会を拒んだ。それに対して何人かの会員が退会した。山城の文を読むと、中上健次、柄谷行人、筒井康隆、井口時男の4名の名前が挙げられている。
永山は”裁判を有利にするために入会を利用している”と協会が誤解しているので辞退する、と言ったらしい。
秋山駿はそれに対して、「何を言うのか、と思った。あなたの犯行は、自分の心の声がすべて社会によって誤解され、ついに出口の無くなったところに生じた行為ではないのか、いまさら「誤解」されたくないとは、何を言っているのか。(略)」、と「永山則夫と私」に書いた、という。秋山は信念の人であった。そして、ドストエフスキーの小説に出てくる犯罪者や小松川女高生殺しの犯人である李珍宇など、心に闇を持っている者を理解し、彼らに共感を覚えていた。
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